笊の水汲み　あるいは日々の猫　ーfixxによるブログ的な何かー

あらゆる港から出港する、
どこへも行かない船。
ついに経験することのない航海の
練習船。

これまで、とか。
これから、とか。
そんなことじゃない。
いま必要なのは、いまそのもの。
一瞬ごとに問いかけられる存在へ
どんな意思を？
どのように伝える？

幾つもある窓の
どれをのぞいても今日は雨
世界に背を向けて
あくびをひとつ

空を区切り、奥行きを喪失させる
ひとの仕事。
大きく、明るく、からっぽで寂しい
原罪の設計図。

とつぜん、
自分がひとりだという考えにとりつかれる。
この狭い地上で、
そんな幸運なんかあるはずもないのに。

とりはらわれた梯子が見せるのは、
うそ寒い自己愛や恥辱、
見せかけの拒絶でしか埋められない空間。
どこから来たのでもなく、
どこへも帰らない。

よかった。
きみがそこにいるからには、
ぼくもここにいるんだろう。

何のためにか、
とにかく僕らは互いに隔てられている。

追われるようで、
変われないようで。
振り返れば、
故無き不安なのかもしれないが。

新鮮な目に映る世界が美しいなら、
そして倦んだ視線の先にはくたびれた未来しかないなら、
きみについていくから、さあ行こう。

届きそうで届かない。
もどかしい描線。
この、
記憶。

潮の満ち引きと月齢には関連があり、
我らの体内には海がある。
となれば、満月の夜に血潮が騒ぐくらいは意外でもない。

待つのは嫌だ。
嫌だから待っている。
待つことがはやく終わるように。

誰そ彼という時間。
そう問う自分もまた誰なのか。

本質は変わっていないつもり、
しかし年月が変化をもたらす。
まったく違うもの、見知らぬ価値へ。

もしも空を飛べたら、こんどは空にとらわれるのか？

いちにちが終わってしまうこと。
まだ何かできたはずの時間が過ぎること。
そして、できることなどないことに気づくこと。

危うさや立地は、
ほんとうは何も関係がない。
居場所のいごこちの良さとは。

昼から夜へ。
どこかで引かれる線。
長く、見えない拒絶の糸。

それは同じ空。
恋人たちが見上げる夕日。
レーダーが哨戒するなか、無防備にのしかかる不安。
ねぐらを目指す鳥の道。