笊の水汲み　あるいは日々の猫　ーfixxによるブログ的な何かー

ただ単純な感情、
それが私たちをかたちづくり、
際立たせている。

焦点の定まらない音。
記憶の奥に沈んだ言葉。

強い風と雨が歌う、
嫌な歌。
心のどこかで覚え、
繰り返す。
雨の歌。

そこにいること、
それが価値。

肯定しない。
今を、
ここを。
承服しがたいからこその声。

打ち上げられ、
海から来た生き物の姿を模倣する。

風の匂い、
草の硬さ、
太陽。
すべてが変る音がする。

いつも時間は今しかなく、
何か待つのは堪えがたい。

繰り返し、
同じ座標にとどまることで、
次第に居場所ができてくる。

見えますか？
ここにいます。
わかりますか？
この気持ち。

森がいい、というのは
暮らしていないものの言葉。

隠された瞳が
見えない自分の姿をじっと、
追い続けている。

あたりにあるものによって、
際立たされる輪郭。
ディテールのない個性。

登っていくと、
景色が小さくなる。
自分はかわらないのに。

もうじき、
空の猫の瞳がまばたきする夜。

ほんとうなら
きれいな夏の夕暮れごろ、
毎日こうして森にいたはず。
人類のいない地球で。

とりまいて、
迫ってくるから、
ひっくり返って死んだ振り。
日常から逃げ出すならこれしかない。

生きているというのは、
今ということ。
くるんと丸く尻尾を回して。
背筋を伸ばして。
空を見て。
みんな、明日では遅いこと。

知ってる？
地球は夏の思い出みたいに
壊れ物で、
移ろいやすいんだよ？

遠くを見る。
名前は呼ばない。
遠くを見る。
景色の音がする。
遠くを見る。
ゆっくりと草がしおれていく。
近くを見る。
すると、もう何も見えない。